全日本ロードレースST600クラスに参戦レポート

中山しんたろう選手 2012年総括

2012全日本ロードレースST600クラス 参戦レポート総括

はじめに

2011年秋に地元石川県のウインズジャパン様がコンチネンタルモーターサイクルタイヤの正規代理店となり、お声をかけていただいたことがご縁で、中山しんたろうは、今季コンチネンタルモーターサイクルタイヤと共に全日本ロードレースST600クラスを戦うことになりました。
今年使用したのはコンチ・レースアタックコンプ(ソフト)というタイヤで、プロダクションレース用のタイヤです。コンパウンドが3種類ある中で一番柔らかいソフトタイヤを年間通じて使用しました。

自分自身も初めて見るタイヤでのレース参戦となった今季、激戦の全日本ロードレースST600クラスにおいて海外メーカー、しかも国内で初登場のタイヤを使用しての参戦は大きなチャレンジでした。優位を保っているピレリタイヤを使用したことで成績を挙げてきた自分ならなおのことです。
しかし、プライベータとして有力チーム、ライダーの参戦する全日本ST600クラスにおいて彼らと勝負するには他と違うチャレンジをしなければなりません。そういう意味では大きなチャンスでもあると考え、このタイヤと共に1年間レースを戦わせていただくことに決めました。

年間を通して得たフィーリング、マシンセットの方向性、そしてライディングの方向性ををここに書きとめます。

初めてのコンチ・レースアタック

コンチ・レースアタックコンプを初めて試したのは2011年の秋、鈴鹿サーキットでした、気温25度前後、路面温度40度前後とサーキット走行を行うに適した環境の中、ソフトコンパウンドで走りました。
それまで使用していたタイヤと両輪ともかなりのフィーリングが違いチグハグなライディングでしたが、ベストタイム自体はさほど悪くない事が驚きで可能性を感じました。

コンチ・レースアタックでの本格テスト

2012年シーズンも使い慣れた08年モデルのCBR600RRを使用していましたので、基本的なセットアップはなくタイヤの変更に対してのみに集中することができました。

本格的なテスト走行は3月21日、22日からでした。

まず感じたこと

これまで使用していたタイヤに比べてタイヤが固いという事。
温間空気圧でF2.1R1.8という標準設定でも路面のギャップを多く拾います。

しかし、タイヤのゴムが柔らかいためか、ウオームアップ性能は非常に良く2周目からベストタイム付近での走行ができ、固さは構造によるものだとわかりました。

フロントタイヤに関しては剛性感があり加重のかかるフルブレーキングには大きな変形もせずに確実に路面からのフィードバックがありますので、ブレーキング時タイヤのグリップに安心感があります。切り返しなどの場合にも剛性が高く、つぶれが少ないためか取り回し自体は非常に軽いです。
ただ、サスペンションを伸ばして掛けるという過程でタイヤのつぶれの変化が大きく、フロントタイヤに関しては抜けた部分でマシンを暴れさせないように繊細なマシンコントロールが必要となります。

また、コーナー進入でブレーキを離し、加重がフロントタイヤから抜けるタイミングでサスペンションよりタイヤが先に跳ね返り接地感が希薄になります。
結果、加重が掛っている時と抜けているときのグリップの違いにより、安定した旋回を引き出せなくなってしまいました。よって、これまでブレーキを離していたタイミングでも、レースアタックではブレーキを残しつつ、旋回が始まるまでフロントタイヤから荷重を抜かないように走る事でタイヤのグリップを引き出すことにしました。

リアタイヤは剛性が高く、加重を多く掛けてもタイヤの形状を維持しているのでアクセルをオープンにしていく過程でもリアタイヤ自体から旋回性を感じラインをトレースさせられます。その辺りは間違いなくアドバンテージとなります。
タイヤ表面が綺麗なうちはかなりの加重をかけることができそれに対応してグリップ感も得られます。
ただ剛性のある分旋回中のつぶれ量が少ないのか、タイヤが摩耗してきたレース終盤はタイヤ表面でのグリップが得られず開け始めに神経を使います。

タイヤ自体が変形せずにしっかりと荷重を受けとめてくれるおかげで、ギャップが少ないコーナーではフルバンク状態になってしまえば、その姿勢をキープしやすく結果バイク自体のバンク角は深くなる傾向になります。

足回りに関して

足周りに関しては、シーズン通じて状況に応じて大きく変更させましたが、それはサーキットのレイアウト、ギャップ等に対してのものであり、過去のデータをもとにしていたためバランスが取れていたようで、年間通して見てみると大きな変更はありませんでした。

ただ、フロントブレーキリリースの時のフロントタイヤのつぶれの戻りと同調させるためにフロントフォークの伸び側のダンパーに関しては掛け方向にはなりますが、切り返しが重くなる事と、立ち上がりでフォークを伸ばしたい時にも伸びずに接地感が薄れてしまうというネガが出るので必要に応じて変更はしましたが、掛けたり抜いたりで結果的には大きな変更にはなりませんでした。

レースで好成績を上げる為に

基本セッティングで前後の車体姿勢が整っているならば、ライディング、旋回ポイント、ライン取りを変更させて行く事でこのレースアタックの良い部分を引き出すことができると感じました。

基本的に多くの荷重を片方に掛ける事ができますが、急激に行いすぎるとタイヤの表面を傷めてしまう事になります。レースディスタンスでしっかりと荷重を乗せなければなりませんが、マシンに大きな挙動をかけないためになるべくスムーズに走る事を心掛けました。

ゴム質

レースアタックコンプソフトのコンパウンドは路面温度が低い25度以下での走行でもウォームアップ性能も良く、グリップ感は大きくは落ちないのですが、自分のライディングではリアタイヤのトレッドがホイルスピンにより剥離し極端にライフが短くなってしまいます。
一度剥離が始まってしまうと以後はひどくなる一方でアクセルを開けられず大幅なペースダウンを余儀なくされます。(画像:オートポリスレース1)
また、ホイルスピンや大きな荷重をかけないようにするとペースは落ちますが、タイヤはしっかり最後まで持ちます。
ゴム自体の柔らかさはあり、グリップ力はかなり高いと思います。

シーズン序盤はこの症状に悩まされましたが、路面温度は30度を超えた所から正常に摩耗が始まります。
シーズン中盤にミディアムコンパウンドを試しましたが、気温30度、路面温度40度の中でも全くゴムが溶けず、機能しませんでした。
その後、路面温度の50度あったSUGOでも試しましたがまったく走行できませんでした。

写真は
(1)シーズン初走行後: フロントタイヤを使えずリアだけが荒れた状態。
(2)オートポリス/レース1:リアタイヤの異常摩耗により、最後尾を周回。
(3)オートポリス/レース2:とにかく丁寧に走り最終ラップまで持ちこたえた。

年間を通して

2012年フルシーズンを走り感じたことは、レース後半にタイムを上げにくいので、序盤からタイヤ自体のウオームアップ性能の良さを活かし、できるだけ前に出て、タイヤのおいしい所を使い切った後はペースをなるべく維持していくという作戦になろうかと思います。

序盤で国産勢を引き離し、その距離を維持しながらレースを展開して行く事が正攻法だと思います。

レース1年を戦ってコンチレースアタックは他社製品に対して一発アタックの予選時での性能は引けを取って無いと思います。

また、しっかり荷重がかかった時の最大グリップ力に関しては最高レベルだったと感じております。実際にロガー上では過去のデータより走ったスピードが高いコーナーがいくつかありました。
コーナー進入から立ち上がりまで荷重を抜かないようにしっかりと旋回させることができれば、海外・国産メーカーのトップクラスのタイヤにも対抗できると考えます。

最後に

今季1年コンチ・レースアタックコンプを使用し、タイヤの特性や持たせ方を理解し、ライディングを改良してきました。
そのデータもしっかり残っています。来季はマシンを変更する予定ですが、今季使用してきたものよりは確実に良くなりますし、フロントタイヤは変えずに、リアタイヤが60扁平になれば、レースの内容そのもので確実にポテンシャルアップを図れると思います。
ロングランデータもありますので、今より順位を上げる事は可能ですし、安定した順位を狙うことができると思います。

活躍する事でより多くの方々にコンチネンタルモーターサイクルタイヤをPRし、多くのユーザーにコンチ・レースアタックコンプの性能を伝えて行く事ができればと思います。

2013年も応援よろしくお願いします!

中山しんたろう

中山しんたろう選手オフィシャルブログ

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